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「盤鬼のつぶやき」第10回。

盤鬼、平林直哉さんよりのメルマガ「盤鬼のつぶやき」も早くも第10回になりました。
今回はいまだにファンも数多い、大指揮者ムラヴィンスキーとある日本の方について。
です。
ではどうぞ。

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メール・マガジン
盤鬼のつぶやき第10回
2009年2月9日号

ムラヴィンスキーを愛した
大野弘雄さん、逝く

 大野弘雄(おおの・ひろお)さんが1月23日に亡くなった。享年68歳。大野さんはアルトゥスから発売されたムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルの来日公演の音源提供者だった。
 大野さんがムラヴィンスキーの公演を録音しようとしたきっかけは、レニングラード・フィルの楽団員からの依頼だったという。ムラヴィンスキーが生前発表した録音は非常に数が限られていた。ある時期は10年以上も全く新譜が出ていなかったこともあった。おそらく、楽団員にとっても自分たちの成果を音として聴く機会も極めてまれだったに違いない。大野さんはレニングラード・フィルの楽団員と直接の交流があり、その楽団員を自宅に招いた際に録音のことを切り出されたらしい。楽団員にとってはツアーの合間の日本観光もおおいに興味があっただろう。しかし、旧ソ連の国家の代表として来日し、特別な思いを込めて演奏したに違いない彼らにとって、その日本公演の音も聴きたいという思いは十分に理解できる。
 かくして、数多くの日本公演が大野さんの手によって保管されていたが、むろん日の目を見ることはなかったし、私もそのような噂すら耳にしたこともなかった。それが公になったのは日本ムラヴィンスキー協会主催の、ムラヴィンスキー夫人来日歓迎会の席だった。夫人は言うまでもなくレニングラード・フィルの首席フルート奏者で、公私ともどもムラヴィンスキーを支えていた人物である。夫人はこうもらした。「私の夫は時々録音をしても、聴いたあとすぐに消せと命令していました。今にして思うと、録音をした人が主人の言いつけを守らずに、とっておいてくれたらどんなに良かっただろうと思います」。そのあと、大野さんは夫人に保管していた録音のことを伝えたようだ。むろん夫人は怒るどころか、望外の喜びだったという。
 かくして、この一連の来日公演はCD化されることになった。特に、私のようにその演奏を体験した人間にとっては、興味津々どころの話ではない。そのムラヴィンスキーの来日公演については「クラシックジャーナル」020号に詳述したのでそれを参考にしていただきたいが、ここではその中でも最も印象的なところだけを書きとめておきたい。
 まず、シューベルトの「未完成」(ALT053、1977年)である。この時、私は文化会館の最前列右側で、ムラヴィンスキーを見ていた。ムラヴィンスキーは一礼したあと、旧配置の左に陣取る低弦の方を見ていた。しかし、じっと彼らを見ているだけで、演奏がいつになっても始まらない。なぜ始まらないのだろうと思った次の瞬間、低弦奏者たちの左手のポジション移動が見えた。何と、すでに演奏は始まっていたのだ。空恐ろしいピアニッシモだった。CDを聴くとこの時の様子がはっきりと思い出せる。しかし、実演に接していない人にとって、強弱が極端に激しく、またテープ・ヒスの多い録音という印象を受ける可能性が高いが、これは仕方あるまい。
 ベートーヴェンの「田園」交響曲(ALT063、1979年)も忘れることが出来ない。しかも、このCDは当日のプログラムがそっくり1枚に入っている。この「田園」は霧のような柔らかい響きが千変万化する演奏だった。しかし、録音で聴くとやたらに筋肉質な演奏に思えてしまう。最も不思議に思ったのは第4楽章の〈嵐〉である。ここはものすごく弱く柔らかい音で一貫されていたと固く信じていた。その間、約3分半だったが、私は「何と風変わりな嵐だろう」と感じていた。だが、このCDで聴くとごくふつうにガツンと演奏している。この差は、今でもまったくわからない。その時は夢でも見たいたのだろうか、とさえ思う。
 このCDの最後の「ワルキューレの騎行」は生の演奏にかなり近い。けれども、実際に響いた演奏はこのCDの数百倍も凄かった。私はショックのあまり、終わってもすぐに拍手は出来なかった。
 ムラヴィンスキー夫人は「日本での演奏は特別なものだった」と語っていたが、実際、あれこれと比較してみると地元レニングラードでの演奏よりも優れたものが多いような気もする。いずれにせよ、2度と聴くことはあるまいとあきらめていた日本公演、これがCDとして聴けるということは、私にとっては言葉に言い表せぬほどの感激である。大野さんの努力に対し、改めて感謝を捧げるとともに、ご冥福をお祈りしたい。(平林 直哉)

♪♪♪♪♪

平林 直哉
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ムラヴィンスキーといえば、メロディアレーベルにはものすごい数の録音があります。
それに西側でのDGへの録音、あるいはウイーンでのライブなどいろいろありますが
私はこの日本発のアルトゥスのものが録音、演奏でいえば最高ではないかと思います。
よくぞ残っていたり!!
その影には一人の日本人の力があったんですね。感謝感謝です。

クラシックジャーナルの最新号ではカラヤンのライブについての考察がされています。
このカラヤンという指揮者もライブはけっこう暴れていたりします。知的でクールみたいな今までのイメージを少し変えるような状況になるのではないのかな?
とちょっと楽しみにしています。

盤鬼様ありがとうございました。

ちなみに盤鬼様はこんな人です。
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当店にも何冊か盤鬼平林さんの著作は置いてありますので、御自由にご覧下さい。
Commented by sakaituu at 2009-02-10 21:06
ついひきこまれて、読んでしまいました。
ムラヴィンスキーは私も好きな指揮者のお一人ですが、このようなエピソードが!
 盤鬼さんに感謝!
Commented by concerto-2 at 2009-02-11 10:35
今日のさかい様ありがとうございます。
1枚のCD(やレコード)の存在には多くの人の力や支えがあるということを感じますね。
全然関係ありませんが、毎日ほんとうにいろんなことがあるな〜と思うこのごろです。頑張らないと!と思っています。ってうちわの話ですが。
by concerto-2 | 2009-02-10 10:08 | サイト・ブログのご紹介 | Comments(2)